4

1月29日(勝手に、良い服の日と決めた日)rasikuをオープンして4年が経ちます。
月日の流れが経つのは早かったのか遅かったのかは、自分では何とも言えないでいるのですが
31歳で独立をして気付けば35歳。そう思うと、あ、4年経ったんだなという事は実感できます。
オープンした時は4年後の姿なんて想像がついていなくて、でもいざ4年経つと考え方であったり
人との繋がりだったり自分の中で変化している事があって、それがとても面白く感じています。
今こうして毎日を過ごしお店を開けていられるという事は、洋服を生み出すメーカーの方達と、
そして僕らが選んだ洋服を良いと思って購入して下さるお客様、沢山の方々の支えがあってこその事で、
こうして今日も夫婦二人で何ら変わらずお店に立っていられる事を心から感謝いたします。
4年前のオープンの日は、小学校入学式当日の様な・・・″ソワソワ″と″ワクワク″した気持ちが入り混じって
でもどこか集中しているというか気持ちが澄んでいて、今なら何でも出来る!そのぐらいの
エネルギーが溢れていた事。そんなことを鮮明に思い出します。
もっと気温が低くて、雲が空一面に架った冬らしい日だったなと・・・
景色や匂いを思い浮かべながら、今日もいつも通り店の看板を外に出しました。
IMG_5352
僕がこうして洋服屋をやる事になったルーツというかきっかけは何だったかな・・・と、ふと思う事があり
出張のタイミングでもう一度自分の目と肌で感じていた洋服との時間を振り返ろうと思ってその場所に行ってきました。
僕は20歳になるまでは神奈川県の鎌倉に自宅がありました。自分が記憶している中ではっきりと意識して
洋服を本当に好きになったと思うのは中学生の頃でした。
小学生の頃は行動できる範囲が決まっていた事もあり、それが中学生になると自転車や電車などを利用して
冒険出来る場所が圧倒的に広がったのが、洋服にのめり込んでいった理由の1つなのかもしれません。
もしこれが地元にある限られたお店だけに行っていたら、きっとこんな風になっていなかったと思うし
ある意味であの頃から貴重な体験をしていたのかもしれません。
その当時は中学生なので洋服を満足に買えるだけのお金ももっているはずがなく、たまに貰える親からの
お小遣いや遠足の前は遠足用にと洋服を買わせてくれるので、隣町の藤沢市まで自転車で約30分~40分くらい
かけて行き、古着屋さんを1軒1軒端から端まで見るというのが楽しみでもありました。
それでは飽き足らずお正月などでお年玉などを貰うと、それを握りしめてその藤沢から小田急線に乗って
下北沢まで古着を買いに行く中学生になっていました。
なぜ下北かというと良質な古着が安価で買う事が出来たのと、また当時学校で格好良い(イケテル!?)人達は
下北沢までわざわざ行って洋服を買っていた・・・という単純明快な理由から。
電車に揺られ1時間弱で目的の下北沢に到着します。駅を降りて商店街を抜けてまっしぐらに目的の古着屋に
向かって歩き始めます。お財布の中には中学生には大金となる1万円札が1枚と帰りの交通費の小銭が少し。
お昼代なんていうのは端から考えていなかった(笑)

IMG_5355
目的の古着屋は商店街を抜けてすぐの場所に、簡易的なテントを張ってその中に古着がこれでもかというくらい
ラックやテーブルにパンパンに掛かっていてどうにもこうにも掘り出さない限り、欲しいモノが見つけられない環境でした。
それが当たり前でしたし、その中から良いものを見つけるのが楽しみであり醍醐味でもあった気がします。
古着の匂いと冷たい外の匂いに混じって、雑多に置かれた灯油ストーブの音とほんのりと暖かな風。
その空気が何とも言えず好きでした。
当時はリーバイス501が人気で、如何に色落ちの良い1本を見つけられるかに必死。
中学生なので勿論ヴィンテージと言われるモノは買える訳もなく、何百本とあるリーバイス501の中から
先ずは自分のサイズに合うモノを探し出して、そこから極力色落ちとコンディションの良いものを吟味する。その繰り返し。
そして最後にこれだっと胸を打つ1本を買う!!という作業をリーバイスに限らずに1つ1つの洋服に対して
永遠のループで繰り返していました。その間に他のお店を見たりしているので、とにかく下北沢にいる時は
ずっと洋服に触れている状態でした。
お昼ご飯も何かしらは食べていたはずですが、そういう記憶は全く残っていないのに自分でも驚きます(笑)
朝から夕方まで一日中そんな事をやってるものだから日が暮れる頃には、体力の塊の様な中学生でも
さずがにヘトヘト。ただパンパンのラックにテーブルに山積みされた洋服の山の中からアンテナに引っ掛かる1枚を探す。
これを何度も何度も繰り返していると、いつしか自分の中でも好きなものを見つけられるようになっていて
審美眼?というのか見る目が勝手に鍛えられていった・・・のかもしれません。
帰りの小田急線は直通が少なくて町田で乗換をしなければならない事が多くあり、寝過ぎて乗り過ごす事だけを
注意しながら藤沢までの道のりを帰っていたような気がします。
そこで購入した新しい(古着ですが)洋服を、部活がない休みの日に着れるのが嬉しくて嬉しくて
何かの発表会!?の様な感じで自転車を漕ぎ、友人が集まる公園に繰り出していました。
IMG_5359
何年振り・・・久しく足を運んでいなかった下北沢の駅を降りた瞬間に当時の事が鮮明に思い出されました。
再開発が進んでいる状況でしたが、それでもまだ良い意味で雑多な商店街もありそこを抜けたあたりに
僕の好きだったビニールテントの古着屋さんがあって、勿論今はもう無くなっていて違うお店になっていましたが
懐かしさは感じる事が出来ました。今も尚、当時よりは大分少ない気がしますが、それでも数多く古着屋さんが
存在している下北沢。時代は変われど、その土地に永く根付いた文化というのは受け継がれるものだという事を
改めて実感してきました。これから5年目そしてその先に向けての、確認作業が出来た気がしています。
洋服に対する想いも考え方や着方に関しても、20年前も今も根本的には変わっていないですが、
ただ以前と比べれば、凝り固まった薀蓄中心の固定概念が薄まり、ある程度柔軟に受け入れて
何でも着てみようと着こなしの幅も広がった様な気がしています。
そういった自分の中の変わらない部分と変わっていく部分を、rasikuと言う場所で
古着も新品も分け隔てる事無く、今の時代だからこその僕らの感性や気分を洋服の着方や、
提案する洋服を通じて伝えられたら良いなと思っています。
これからrasikuが目指すべき姿は、ここにある事が当たり前になって、ドキドキもするけど何だか落ち着く。
特別だけど特別じゃない、いつも着ている白いシャツやボーダーのTシャツ、デニムやチノ、キャンバスのバッグにスニーカー。
日常の風景に溶け込む洋服や、気分が上がる心地良い服。自然と笑顔がこぼれるモノやコト。
ここにくれば何か素敵な出逢いがあって、じっくり吟味して選べる。
僕らの作る店はそんな場所でありたいと思っております。
毎日眺めている中津川の穏やかな流れのように、これからもゆっくりと洋服に向き合っていければと
思っていますので5年目のrasikuもどうぞよろしくお願い致します。

PageTOP