旅の記録 富山


旅は二日目の午後から富山県へと続きます。
金沢から富山へは高速道路を使って約1時間で到着。
お腹もすいたタイミングで先ず向かったのは、市内にある老舗のお蕎麦屋「つるや」さんへ。
あまりの暑さに迷いなく二人で冷たい蕎麦を注文。蕎麦は言うまでもなく絶品でした。
美味しいご飯に巡り合えると元気が出ますし、それだけで足を運んだ甲斐があったなとも思います。
特別感があるという訳ではなく、同じクオリティで淡々と当たり前にやり続けているお店は佇まいもそうですが
店内に入ると空気感で伝わるものがあります。次は季節を変えて温かい蕎麦を食べに行きたいです。


「つるや」さんと同じ通りで、民芸品を中心に店主の独自の目線でのセレクトされた商品が並ぶ「林ショップ」さん。
更に二軒お隣にある古本のお店「ブックエンド」さん。
「林ショップ」さんは、以前からふとしたタイミングでお勧めされていたお店で必ず足を運ぼうと決めていました。
お蕎麦屋さんを出て直ぐの向かい側、徒歩三秒ぐらいのところ。
ふぅっと深呼吸してすこしだけ緊張しながら扉を開けると、お店の隅に店主さんがいらっしゃいました。
ゆっくりと店内を見渡して、林ショップが好きだと教えてくれた人達の気持ちが分かった様な気がしました。
欲しい物があってよっぽどの物でなければ今では外に出なくても、近所にお店がなくても手に入れる事は可能な時代。
逆に言うと、この人からモノを「買いたい」とか、このお店に行ってその場で「選びたい」と心からそう思えるお店は
圧倒的に数は限られるはずです。
扱っているものが特別な物であろうとそうで無かろうと、店主の想いやスタンス提案の仕方が重要で、
国内外問わず林さんの目線で選ばれたアイテムが小さな店内に心地良さそうにディスプレイされていました。
その日は地元の作家さんが作った涼し気なガラスの器がメインに並べられ、富山の土人形に、岩手の竹細工の籠も
あったりして親近感がぐっと増したのは言うまでもありません(笑)
押しつけがましくなく、程よい距離感を保ちながら1つ1つのアイテムにきちんと自分の言葉で真摯に話をして
下さる姿は、同じようにものを販売する立場として見習うべき点や気付くことが沢山ありました。
「林ショップ」さんでは土人形や富山の家具メーカー「カキ工房」さんで作られているフォールディングチェアを購入。
並びにある、古本のお店「ブックエンド」さんでは気になった本を選んでこの場を後にしました。


車で数分の場所へ移動し、今度は富山城跡付近を散策。
こじんまりとした城跡でしたが、そのサイズ感が逆に新鮮に感じられました。
富山の街は大空襲で一度焼けてしまっていて、その後に再開発された土地という事で区画整理がきちんと
されているので道幅が広く、路面電車が通る綺麗な街並みにはとても惹かれるものがりましたし
観光客の人よりも地元の人が穏やかに生活していて、時間がゆっくりと流れている様子は盛岡に空気感が
とても似ているとも思いました。
富山に足を運んだ理由として見てみたいお店があるのもそうなのですが、一番に「人に逢いに行く」のが
目的でしたのでその場所へ向かいました。
逢いたいと思った人は、本人がまだ大学生だった頃に週末にだけrasikuで働いていた事のある「S田君」
覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、現在は地元である富山に戻って就職しているという情報を
キャッチしていましたので、いざその職場まで。気付かれないように店内に入ると、キリリと働く彼を発見。
元気そうな姿を見れて、それだけで一安心しました。(笑)
こうして人とのご縁で富山にまで来ることが出来たので、旅の目的を「場所」ではなく「人」にする事によって
何処まででも行こうという気持ちになれるのは、何だか不思議なものです。
たまたま彼が務める店内にある小さなギャラリーでは企画展「民藝の再発見 -柳 宗悦の美学を導いた南砺の土徳-」
を拝見する事が出来ました。小さな展示スペースだったのですが、昨年たまたまお客様からご案内をいただいて
仙台市博物館で観た柳 宗悦の展示や、今年に入って聞きに行った幾つかのトークイベントの内容とも
繋がる要素が含まれていて、偶然なのか必然なのか自分にとって気になっていた事がすっと解けるような感覚があって
人に逢いに行った事がプラスの方向に進む大きなきっかけになりました。


夜は市電にのって目的地に向かいます。市電が走る街はそれだけで好きになります。(軽い鉄)
おでんと魚介系が美味しい居酒屋「丸一」さんをセレクトしてくれていました。
S田君は後から合流するとの事だったので、二人で先に入って気になるものを注文。
写真はないのですが、ここの「おでん」も絶品。何を頼んでも美味しくてしかもリーズナブルな価格設定。
合流する前に食べ過ぎないようにしようと決めていたのですが、あまりの美味しさに我慢できずに親子丼まで注文し
食べ過ぎで既に大満足。仕事を終えたS田君もようやく合流。色んな話を聞かせて貰おうと思っていたのですが
ご飯とお酒の美味しさがプラスされて自分の方がテンションが上がりべらべらとしゃべり続けてしまっていたようです。
また今度ゆっくり話聞かせてね。
岩手で出逢ったのがきっかけで、未開の土地でもある富山で再会出来るのは何かの「縁」だと感じましたし、
今でも少しかもしれませんが慕ってくれている!?(笑)のは単純に嬉しいものです。


林ショップさんがある通りにある「SIX OR THITD」さんも素敵なカフェでした。
昼間にも通って気になったのですが、お昼を食べたばっかりだったので入らずにいました。
僕らが行った日がたまたま夜営業をしていたうちの1日で、たまたま居合わせた地元の方と仲良くさせて頂き
2次会も楽しい時間を過ごす事が出来ました。
こうして知らない土地に行って、偶然に知り合いになった方のお話を聞いたり、岩手の事を話したりするのは
何だか不思議な感覚があったのですが、その土地を好きになるきっかけになるのは間違いありません。
富山の方は印象として皆さんマイペースで、ゆっくりとした空気感が岩手にも通じる点に感じ肩肘張らずに
リラックスして過ごす事が出来ました。


翌朝は朝食を食べに行こうと幾つか候補があったのですが、昨日の夜に教えて頂いた「ロゼッタ オ ミケッタ」さんへ
元々はイタリア料理の「CIBO」というお店を20年以上続けていたそうですが、今年の6月にサンドイッチのお店を
オープンされたとのことで、朝7:30から開店しているので、朝派の自分にとってはこの時間からこんなに美味しい
サンドイッチを出してくれるお店が地元にあるなんて何とも羨ましい限りと思いました。
注文したサンドイッチはどれも絶品。一緒に注文をした珈琲もパンチがあってサンドイッチと一緒に合わせると
どちらもより一層美味しく感じられました。
ひょんな事から店主である森さんと話が膨らんで、盛岡の事や、共通の話題があり楽しい時間を過ごす事が出来ました。
真摯に物事に取り組んでいらっしゃる方は、どちらかと言えば商業的な発想ではなく、自分らしい表現をする為に
どうすれば良いのかを考え行動されていて、本当に短い時間ではありましたが、勝手に背中を押してもらったような
素晴らしいひと時になりました。
美味しい朝食をお腹いっぱいに食べて、帰りの車内でも美味しいパンを食べながらドライブを楽しみたいと思い、
野菜と卵のサンドイッチとブルーベリーとクリームチーズを挟んだベーグルを追加でお願いしました。
帰り際に森さんからお土産にと、メンチカツを挟んだイタリアでバラのパンと呼ばれている「ロゼッタ」を頂き、
粋な心遣いに感謝の気持ちでいっぱいになりながらお店を後に。
今度また富山に着た際には必ず行きたいお店、そして逢いたい人。本当にありがとうございました。


旅の最終目的地は移転新築したばかりの「富山県立美術館」へ
時間ギリギリまで見てみたいと思った美術館は、中に入る前からワクワクするような美しい建物。
設計は内藤廣さん。土曜日でしたが混雑することもなく時間の許す限りゆっくりと中の展示も建物そのものも
見る事が出来ました。子供も大人も誰もが其々に楽しめる空間。特に「オノマトペの屋上」という名の屋上庭園は、
訪れた人にしか味わうことが出来ない感動があります。
気温がぐんぐん上昇する中でも、言葉にして楽しめる遊具をこども達に混ざって堪能してきました。
本当はもう少し見たい場所があったのですが、その日は長岡市で行われる花火大会の日にぶつかってしまい
あまり遅くなり過ぎると渋滞に巻き込まれる可能性があったので後ろ髪を引かれつつも富山を後にしました。
車内でサンドイッチを頬張りながら、今回の旅の話を二人であぁでもないこうでもないと語りつつも9時間かけて
無事に盛岡に帰宅。旅は自分を見つめ直す良い機会でもあり、その土地の地形や文化、習慣を知る事が出来
地元の美味しい物を食べれて、生きている事をより実感する事が出来ます。
また「人」に会いに、様々な土地に足を運んで得た知識や感覚をお店に表現していきたいと思っています。
金沢・富山どちらも其々に特徴があってとてもお勧めです。ぜひ旅の候補地に如何でしょう。

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