MEGANE ROCK

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突然の一通の手紙がrasikuに届きました。
その手紙にはデザイナーのモノ作りに対する熱意と人との「縁」を大切にする気持ちが綴られていました。
手紙が届いてから数日後、盛岡で直接お逢いする時間を作って頂き鯖江から盛岡に足を運んで下さった
″MEGANE ROCK″のデザイナー雨田さん。
年齢が一緒という事もあって、見てきたものや触れてきた事の共通点が多く色々とお話をさせて頂きました。
10年程前にある職人さんの眼鏡を見た時にピンとくるものがあり、これが全て人の手仕事で出来ているという事に
感銘を受けたそうで、弟子入りを懇願し10年前に地元の鹿児島を離れ福井県鯖江市に移住。
眼鏡作りの職人として一歩を踏み出し、眼鏡の生産に関わる全てのセクションで働いた経験を活かし3年前に自身のブランド
″MEGANE ROCK″を立ち上げました。職人になった雨田さんは鯖江市にある小さな工房でデザインから生産
営業に至るまで全てを一人でやられています。盛岡に着て頂いた際に商品を持ってきて頂いたのですが
その中の1つに僕自身が気になったデザインの眼鏡があり試着をししていたのですが、あっという間に電車の時間が迫り
「欲しい」と思ったものの結局決めきれずに、今度は僕が鯖江にある工房にお邪魔するという話をして
雨田さんとはその場を別れました。
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※屋根の上のビニールシートは雨漏り対策だそうです。(笑)
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後日、初めて足を運んだ北陸の地、福井県鯖江市。
名古屋から特急電車″しらさぎ″に揺られて2時間。目的地の鯖江駅に近づくにつれて何層にも深みを帯びる
緑の景色は見ていて飽きがこなかったですし、盛岡にも負けず劣らずの自然が豊かな土地だということと
福井県の人口の規模や街の大きさ等という部分においても、とても親しみを持てる場所でした。
目的の鯖江に到着すると大小様々な工場と工房が点在していて、国内で生産をされている眼鏡のおよそ95%を
この地でシェアしています。元々、眼鏡作りが盛んな土地は大阪だったようですが、2時間余りで行ける距離と勤勉な
人柄がモノ作りに反映して徐々に鯖江に工房が移ってくるようになり、現在では眼鏡=鯖江というまでに浸透しています。
僕自身は視力がすこぶる良くて今まで眼鏡を必要とする事は殆どなかったのですが、もっと年齢を重ねて顔に雰囲気が
滲み出るようになったら眼鏡が似合うのかな、そうなれたらかけてみたいな、と頭の片隅に思っていました。
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工房にお邪魔すると扇風機が一台でクーラーなどの設備は一切なく、この日の気温は32度。
この少しくらい不便な環境(雨漏りする屋根など)が自分にとっては良いんだと雨田さん。
というのも、気温や湿度によって微妙な力加減が必要とされる眼鏡作りは、手先の感覚と経験による
微調整を繰り返しながら完成させるそうです。夏場この環境ではより神経を集中をさせる事になるけれど
それが良いんです。その分、生産量はぐっと落ちるんですけど(笑)・・と話す姿がとても印象的でした。
見た事のない什器があちらこちらに並んでいて、メガネは左右のレンズがあるので同じ機械を2台ずつ必要で
様々な工程がある中でも、眼鏡作りで一番重要視する作業は研磨する事だと仰っていました。
″MEGANE ROCK″で使用しているフレームはセルロイドと言われる天然の樹脂を化学反応させた素材で、
特徴として強さがあるのでノーシン製法(耳のかける部分に金具を入れない)での作製が可能。
磨けば磨く程に艶が増して、美しい経年変化は工芸品の様な趣になる。
どこか眼鏡を客観的に捉えていてプロダクトとしての冷たさとハンドメイドならではの温かさと繊細さを併せ持っていて
僕自身も初めて見た時に″モノ″としての美しさに惹かれてしまいました。
僕らの様な洋服屋で提案する以上、ファッションという側面も持ち合わせていますが、それとは少し違った目線で
見る眼鏡というのも、とても面白いなと思いました。
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壁の所々に貼られているDMだったりインスピレーションが面白く、雨田ワールド全開と言った感じでしょうか(笑)
その中の1つに柳宗理の言葉で「本当のデザインは流行と戦うところにある」とはっきりと雨田さんの字で
書かれた眼鏡の箱が目に飛び込んできました。しかも二つ。笑
″MEGANE ROCK″の眼鏡を見た時の僕自身の第一印象が、媚びていないというか売り易さであったり
誰にでも似合うというような当たり障りのないデザインではなく、ただ自分の良いと思える物だけを純粋に
作っている気がしていました。眼鏡というアイテムに対して全くアンテナを張っていなかった僕の心にもすっと響いてきて
身に付けてみたいと思わせる何かがありました。。鯖江まで足を運んだのも作り手の雨田さんの人柄や眼鏡その物を
より知りたいという想いと、その土地の空気や雰囲気を自分自身の肌で感じたいというのが理由でした。
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その後、実際の作業工程を見せて頂きましたがセルロイドを使った眼鏡は磨きに始まり磨きに終わる・・・
というくらい研磨する工程がとにかく多くあり、その磨きの技術で仕上がりの善し悪しが決まると言われていました。
効率を求めればセルロイドを使用するよりもアセテートと言われる素材を使う方が、より簡単に効率良く製品が出来るそうですが
仕上がりの美しさ、掛け心地、経年の変化などはセルロイドでしか味わう事の出来ない良さがあるから手間を惜しまずに
更に磨きの技術向上させて、掛けた時もそうですが、外して眼鏡を地面に置いた時の存在感やモノとしての価値にも
拘り続けていきたいと仰っていました。
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現在は1か月で約70本の眼鏡を生産していて、それ以外にも新しいデザインにも取りかかっているそうです。
雨田さんの中ではあくまでも眼鏡職人であって、デザイナーと言われると少しニュアンスが異なり、直ぐに幾つもデザインが
思い浮かぶ訳ではないとのこと。作業をしていると急にデザイン案が降りてきて図面を引いて・・・
やり直しての繰り返しで、作る方の行程が遅れる事もしばしばあるそうです。
自分の出来る範囲で納得のいく物だけを世に送り出すという姿勢はとても共感出来ますし、じっくりゆっくりと
時間をかけて出来上がったものは時代の流れや流行とは無縁であるようにも感じました。
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鯖江には一泊し、その日の夜ご飯は工房から目と鼻の先にある地元の人しか来ないような焼肉屋さんに
連れて行って頂き、驚く程に美味しいホルモンを堪能しました。
翌日のお昼は福井県の名物である″おろし蕎麦″を食べて、旅の醍醐味を十分に満喫した1泊2日でした。
そして忘れてはいけない一番の目的であった″MEGANE ROCK″の丸眼鏡″KOALA”というモデルを直接購入し、
初めての北陸、そして鯖江。そして初めて触れた眼鏡の世界に思いを巡らせ6時間半かけて無事帰路につきました。
同世代の方が真摯にモノ作りをしている姿勢に刺激を受けましたし、表面的な言葉だけではなくその裏側にある
想いや背景なども一緒にお伝えできればと思っております。
そんな訳で、MEGANE ROCK 店頭に並んでいます。
少しずつですが僕も眼鏡・・・掛け慣れてきました。自分と眼鏡が徐々に近づいていく感じが、とても好みです。

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