無題

日々の中で感じる事と思っている事を久しぶりに書いてみようと思います。
rasikuをオープンした当初は月1回は、こういった類の文章を書くつもりでいたのですが・・・
最近はなかなか書けずにいたので、これからまた不定期ですが書ければと思っています。
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盛岡で洋服屋を始めて2年8か月が過ぎようとしています。
この月日の間に変わった事変わらない事・・・小さくとも変化した事は色々とあったように感じています。
自分達の店という事の考え方や在り方、これからの目指すべき姿や憧れ・・・
などずっと変わらずに想っている事もあれば、以前に比べると少し物事に対しての見方や考え方が、
どこか前のめりになっていた様な部分が、一歩下がって客観的に見えたり、一呼吸置いてみたり。
悩んだりもしますが、そうする事でより自分達が好きな事や、こう在りたいという姿がはっきりと
してきた様にも思え、前進しては後退してそれでも一歩ずつ前へ前へ進んでいるようにも感じています。
とは言うものの、試行錯誤しながら過ごす日々には変わりありません。
自分が選んだ商品を手に取り選んで頂ければ嬉しいに決まっていますし、反応が無ければ
原因を追究し次の糧にする・・・その繰り返しと積み重ね。
まだまだ断然に巧くはいかない事の方が多いですが。
だからこそ、この仕事が楽しくてやめられないんだと思ったりもします。
「安定」を求めて独立した訳ではないですし、自分自身が好きな事をやっているからこそお客様にも
洋服の楽しさや奥深さ、着る事の喜びなどが徐々に伝染していくのもしれません。
【洋服は伝染するもの】
洋服が持つその力を、僕は以前よりも強く感じる様にもなりました。

「洋服」というキーワードで大きく見てみると
10年前頃からファストファッションと言われる、低単価の洋服が世の中を席巻し騒がれ、大型ショッピングモールが
地方都市に次々に建設され、洋服を買うという行為が手軽になりそれが当り前の時代になりました。
最近で言えばインターネットでの通信販売が普及して、大手セレクトショップ等では実在する店舗を含めても
一番大きな売上げを誇るのはインターネットの店舗と言った噂も良く耳にするようになりました。
恐らく、個店に置いてもオンラインショップは在って当然の様な流れになっています。
今まで簡単に買う事の出来なかったブランドや、地方都市の離れた場所に住んでいてなかなか実物を見る事が
出来なかった方にとっては革新的なツールになったのは言うまでもありません。
洋服を販売する企業、お客様にとっても大きなメリットになっている事には間違いありませんが、
その手軽さと利便性が「光」とすると、もう一方の「陰」の部分で言えば
洋服を買う行為に対して「人」を介さずに「物」だけが簡単に手に入る時代になったと言えます。
勿論、写真撮影やHPへのアップロード作業、商品の発送など人の手はかかっているものの
販売に対して「人」と「人」とのコミュニケーションが無くなり、「物」と「お金」の流れのみが発生している
状況だと言えます。(勿論ネットの繋がりの中でも本当に親切な対応をして下さる方も沢山いますが。)
「人」との関わり合いがなくて、ある意味で「人」と向き合う「面倒臭さ」や
「場所」に行く手間が省ける事に良さを感じる方もいます。
だからこそ、以前は当り前だった手間や面倒くささに温かみを感じる人もいます。、
そういったぞれぞれの価値観があって、それをどちらも否定する事は全くありません。
ただ、一方で「物」を手に入れるまでの道のりが、スムーズになり過ぎて「物」を「モノ」としてしか
見ていない人が現状では増えているような気がしてなりません。
自分達の店に限った事では無いと思うのですが、自分達の店の意図や温度が伝わらず、
少し残念に思ってしまう様な行動や言動に、言葉を失うことも何度かありました。
そういった事も少なからず上記の内容と多少はリンクしているのではないかと思っています。
自分達がこの店で出来る事は極々小さな事かもしれませんが、強い想い入れや愛着がある
商品のひとつひとつを大切に提案する事で、お客様にとってもその気持ちが伝染し、
お互いが尊重し合い、心地良く買い物が出来る環境にしたいと思い続ける日々です。

「お店の存在意義」について
前の話の続きになるのですがお店がある以上、足を運んだだけの付加価値であったりお店でしか聞く事の
出来ない話をお店側も発信し続けなければいけないと思っています。
それは洋服の着こなしにおいても同じで、例えば同じ商品を購入すると考えた時にインターネットで買っても
お店で買っても全く同じ商品を手にする事が出来ます。
その代わりにほんのちょっとした部分のコーディネートのアドバイスであったり、靴や鞄のアフターケアの仕方や
メンテナンス。そしてくだらない店主の世間話など。
そこでしか知り得ない″付加価値″をお店は付ける事が出来ます。
そして何よりも、自分以外の人からのアドバイスであったり助言は「感性」を大きく刺激してくれると思います。
僕自身も商品を仕入れに展示会に行くのですが、商品を見るのは勿論ですがデザイナーの方の着こなしや
何気ない会話の中から時々こぼれる洋服への想い。
今までに無かった感性を刺激されに行く、というのも自分の中で楽しみの1つと捉えています。
年に二回の展示会は、何度行っても未だに緊張しますしワクワクもしています。
そこで選んだ商品が店頭に並ぶ訳ですが、お客様に対しても同じ様に″ワクワク″したり″ドキドキ″
するような気持ちで「rasiku」のドアを開けて貰えるようなお店を目指しています。
洋服は着てみないと分からない事が多いですし、合う合わないを自分自身の感性で判断し
更には客観的にきちんとアドバイスをしてくれる″スタッフ″がいれば、より自分に似合うものが分かったり、
自分の中には無かった新しい発見があるかもしれません。
そういった事を含めて「お店」の存在意義はあるのだと思っています。

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「最後に」
僕がイメージして理想とする「洋服屋」になるまでは、まだまだ時間ともっと自分自身の感性を磨かなければ
なりません。それでもこうして足しげくお店に足を運んで下さるお客様には感謝の気持ちでいっぱいですし
BLOGでしか商品を紹介していませんが、面倒なシステムにも関わらずお問い合わせを下さるお客様にも
同じくらい嬉しい気持ちでいます。
僕は今でも洋服を買う事は″特別″な事だと思っています。
それは洋服屋として独立した今でも変わらない感情で、自分の店で服を選ぶ時も同じ気持ち。
学生時代から必死でアルバイトをして頂いたお給料を握りしめて「渋谷」「原宿」「代官山」に洋服を買いに行く。
横浜から乗る東横線の急行渋谷行の社内で何を買おうか・・・と想いを募らせる。
いざお店に入って店員さんの着こなしをチェックし、目に飛び込んでくる数々の誘惑と戦う。
お財布に目をやり、自分の中で既に気になった商品の合計を瞬時に計算・・・
けれどまだ1店舗目・・・次に行ったお店でもっと良いのがあったらという気持ちとの葛藤
その後、日が暮れるまで洋服屋をはしごする・・・
家について、軽くなったお財布と重い(想い)の詰まった荷物を開ける喜び。
こんなアホみたいに洋服に没頭した頃の気持ちや買った洋服は今でも鮮明に覚えていますし
少しでもあの頃の僕の様に我を忘れるくらい、この場所で興奮して頂けたらといつも思います。
ただ、言ってる事は矛盾しますが僕自身は無理をしてまで洋服を買う必要はないと思っています。
が、少し手を伸ばす努力や欲しい物に近づく努力をしてみるのも悪くないのでは・・・と思う自分もいます。
無理してほしくは無いけど、欲しいと思う物には自ら近づいてみて欲しい。
このなんとも複雑で曖昧な感情が自分らしさなのかなと思っています。
「洋服」で人を幸せに出来るような「お店」であり「人」でありたいですし、洋服屋として盛岡に無くては
ならない存在になりたいと思っています。
「rasiku」は10月で法人(合同会社)としてなんとか3年が過ぎましたので、今の自分の気持ちを
素直に書いてみようと思いました。久々に書いたので長くなりました。
一気に書き過ぎて、次書くまで時間が掛かりそうです。笑
最後まで読んで下さった方、有難うございます。
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