無題

4月に入り真新しいリクルートスーツに身を包んだ初々しい姿の方々がお店の前を歩いているのを見て
入社式や入学式のシーズンなんだと気付かされました。
この季節ならではのワクワクする気持ちとそれとは対照的に不安な気持ちとが入り混じった、
何とも複雑な感情がふと懐かしくもあり、そんな気持ちも悪くないなぁと思いながら眺めていました。

新年度になったという事でお店で何か変化がある訳ではないですが、新しくこの街に来られた方も
いるでしょうし、何かしら新しくはじまりを迎える方も多いのではと思います。
そんな事を想像して僕も自分の気持ちを綴ってみようと思ったのでお付き合い頂ければ幸いです。
rasikuは相変わらず日々ゆっくりとしたペースで営業をしていますが、その時間や空気の流れ方が
今の自分達にはとても合っているなと感じています。
無理をし過ぎずに続けられる事をコツコツやっていくのが、自分達の形になってきているのかなとも思います。
ご来店頂いてるお客様も実際はどうかは分かりませんが、この場所は焦らずにゆっくりじっくり見られる。
そんな気持ちの方が多いのかな・・・と僕は良い意味で勝手に解釈しています。

焦ったり落ち込む事もありますが、最近ではよりゆっくりで静かな日は色々とやりたい事を考えたり、
買いためていた本やお客様から借して頂いた本を読んだりして、時にヒントになりそうな事が書かれていたりと
自分なりの考えやお店のスタンスに対して色々な切り口から想像したりして、これから僕らはどうなっていきたいか
どんな生き方をしたいのだろうかなどということに思いを巡らせています。

rasikuというお店の名前に関しても「自分らしく」という意味で付けた店名で、最近にしてやっと馴染んできた
気がして、今更ながらなかなか良い名前だったと思っています。「自分らしさ」とは一体なんだろうと考えると
様々思い浮かぶ事はあるのですが、自分自身で考え選択をして意思決定する。これに尽きると思っています。
人から良いとお勧めされて決めるのも、自分の目で見て判断して決めるのも、画像を通して判断して決めるのも
全て自分で選択し決定していることに手段や方法は違えどどれも選択している事に間違いはありません。
その選択する回数が多ければ多い程に価値観や好きな事や物がより具体的になり、自分が惹かれる物への傾向が
徐々に見えてくるようになって、さらにその先は想っていれば好きな物から寄ってくる様になる・・・
そう思うようになりました。
以前までの僕は気に入るものが″これ″と決まっていて、それ以外は一切目に入らなかったり見向きもせずで
その物だけに固執したり、手に入れることに執着をしているような時期がありました。
それはそれで無我夢中になれる物がある事は悪い事ではないですし、それだけ気持ちの高ぶりもあったと思うのです。
そんな事を繰り返しているうちに物との付き合い方や距離感を自然に意識するようになりました。
お目当ての物があったとしても、お店に行ってあったらラッキーだし無かったらないで目の前にある物の中で
直感で良いと思う物があれば買ってみようという楽観的な気持ちでいられるようになりました。
そうなると不思議なもので、欲しいと思う物に出逢える事が増えていくように感じました。
単なる偶然かもしれませんし、たまたまだったのかもしれませんが、そんな気持ちでいると買い物がより楽しくなり
何かに縛られなくなって今まで自分が引っ掛からなかった物にも心が動かされたりして、明らかに今までとは違った
自分自身の感性にも気づかされました。
ある意味運試しみたいな考え方で、自分と物との引き合わせ方がどうなのか。今なのか・・・それとも・・・
といった具合にゲーム感覚でワクワクとドキドキを楽しめるようになれたのが、何よりも収穫です。
この感覚は大学生の頃に、商品が品薄でなかなか思う様に洋服が買えずにいた頃に半分あきらめながら
ふらっとお店に入った普通に欲しい物が買えた時の、あの何とも言えない気持ちに似ているのかもしれません。
その頃は欲しい物が無くても財布にお金が残るのが嫌で意地でも何か買って帰っていましたが・・・(笑)

ここからは僕の今の洋服に対する考え方ですが、ずっと考えていてそれがやっと明確になったなと思う事は
「何を着るか」というよりも「どう着るのか」という方が大切ではないかと思っています。
そして僕は、服よりも人が着ている服と着方を見るのが好きだという事。
高価な洋服であろうと安価なファストファッションであろうと、デザインが強かろうが色がとてつもなく派手であろうと
年齢を重ねるにつれて着ているブランドや価格を気にするというよりは、その洋服を自分がどう着たら
その日一日気持ち良く過ごせるかという所への意識の比重が大きくなってきたように思います。
お店に置いてある洋服やバッグ、靴に関して見え方や魅せ方にはある程度拘りがありますが、大切な事はお客様が
どう組み合わせてコーディネートしたり、何処に行く時に着るのか、誰に逢う時に着るのだろう・・・
そういった事に興味が湧いています。
着こなしのアドバイスは洋服屋として店で伝えられる事や、お客様が何を望んでいるかによって提案しますが
残りの部分はお客様の自由に着て頂く方が、これからずっと続くであろう洋服との関わり合いのうえで
今ではなく後々楽しさが増えていくと信じてやっています。
ですので親切ではないと感じられる方もいらっしゃると思いながらお店に立っています。
店員に言われた通りに着たとしてもそれがマッチするとは言い切れませんし、自分なりの考えや生き方、
ライフスタイルがある程度反映されてこそ成り立つのではと思っています。
お客様は着せ替え人形ではないですし。
少しのお手伝いは出来たとしても答えを教える場所ではないですし、答えがないから洋服は面白いと思っています。
みんなと同じ着方や雑誌から出てきましたというのが正解でもないですし、決して間違いでもない。
それが自分の考えでやっているかどうかが重要だと思うのです。

そんな風に考えて悩んで選んだものが「良かった」と感じて頂けたら、嬉しいですし、それでいいと思うのです。
物への執着はしても良いと思いますが、もっと気楽に失敗してもそれをネタに笑い話が出来る位に
心に余裕があればそれは失敗ではなく、一瞬の恥ずかしさも後に大きな糧になると思っています。
という事で、最近の僕は春の買いもので今まで手にしてこなかったエプロンに挑戦中です。
まだまだ違和感ないぐらいまで着こなせていませんが、着ていて楽しいですし女性には良く褒められます。
気分が良いです!(笑)
今の所、男性の反応は??がいっぱいな目で見られている気がしますが、明日になったらもしかすると
気持ちが変わってるかもしれませんよ。それが洋服の醍醐味であり楽しさではないでしょうか。
はじまりの季節、何を選ばれますか? 洋服もぜひあたらしい挑戦を!
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