10


10周年
僕の中では完全に10【執念】という漢字が当てはまるような気がします。
お店をやられている方、もしくはやったことのある方であれば何となく目標にする数字ではないかと。
どうにかこうにか10年という日々を、自分なりに出来ることを考えて試行錯誤して、それこそ執念を燃やして
おかげさまで2022年1月29日を迎えることが出来ました。

前々からもし10年続けられたら、その時は何かは分かりませんが一言言いたい思っていました。
いざその時を迎えてみると大して言える事はないのですね(笑)
家族や周りにいる方の支えや、rasikuに洋服を届けて下さるメーカーの方、それを選んで下さるお客様。
沢山の応援と叱咤激励、その他諸々と複雑な要素が絡んで時には憤って泣いたり笑ったり、落胆もしたりして
その先に光が射したかに見えたら射さなかったりして。あれっ。。みたいなことの繰り返し。。
お店を続けている間は、そのグラデーションの様な感覚は変わることはないでしょう。きっと。
静かな日もあれば、ドラマチックなことが起こる日もあって、1日たりとも同じ日はなく毎日が刺激的で
そして慣らせばフラット。でも辛さよりは、幸せな出来事の方がやや上回って。
世の中の仕組みや当たり前が当たり前ではないという事実を知り、自分自身の価値観や生き方について考えるには
素晴らしく有意義で大切な時間だったなと、振り返ってみるとそう思います。

独立をする前までの自分は安易に10年は続けるとか、何店舗か広げて従業員を増やしてとか
30代前半の大した経験値のない人間が考えることなんてとても浅くて、幼稚でただ真っすぐ。
これからやってくる幾つもの困難や課題を何も分かっていなかったように思います。
まぁ当たり前ですが分かるはずもありません。。。逆に言えばそれぐらいで丁度良かったのかもしれません。
あまり考え過ぎると前に進む事を躊躇してしまいそうですし、やりながら現実を知ってその都度考えたり選択して
自分の心が良いと思える方に軌道修正しながら進むというのが、その時の自分たちの最善の道筋でもありました。
やりたい事や頭の中のイメージを実現するかどうかは、人との縁やタイミングがあるから、いざそういう場面に
出くわした時に準備さえしておけば、あとは風の吹くままに進んでいくしかないんだろうと。
時代の流れと変化にお店も自分自身も流されながら、これだけは譲れないという小さな意思を貫き通せるか。
頑なになり過ぎて潰れてしまったら何となく勿体ないですし、すぐに吹き飛ばされてしまう船を風向きや大きな波に
舵をバランスよくとりながら少しずつ前へ進めるか。
はじめの一歩を踏み出す勇気と覚悟はどんな事をするにせよ必要でしたし、全く後悔などの後ろ向きな気持ちは
一切ありません。

こうして10年前の今日にお店をスタートさせて、10年経っていつも通りにお店を開け続けているというのは
当たり前に過ぎ去る1日であって、偶然や必然が重なりあって当たり前ではない様な感覚もあります。
僕達自身の心と身体が健康でなければお店を開けれないですし、この事がシンプルで何よりも難しい。
調子が良いタイミングもあれば頭痛やお腹が痛い日もあって、全体的に体調が優れない日も勿論あります。
心と身体の調子をいかに崩さずに良い状態でいられるかは、ここ数年の課題でだいぶ理解も出来て対応方法も
身についてきたけれど、否が応でも年齢は重ねていくものですし40代になったので出来るメンテナンスはしようと
昨年から鍼治療に通い始めたり少なからず変化に対応する柔軟性を身に着けておくべきだと。(笑)
更に言えばお店が続くというのは、僕等が仕入れてきた商品をお客様にお金を出して購入して頂けなければ、
支払いが滞り続けられなくなってしまう。
そんな内的な要因と外的な要因とが微妙なバランスで保たれるからこそ、10年前の1月29日に意気揚々と
この場所でお店をスタートして、10年後の1月29日に酸いも甘いも1周して色々な経験をさせていただいた自分が
いつもと変わらずにお店を開けられているという事になります。そう思うと本当に有り難いことです。
ふぅ~。ここまでで半分です。何も言う事がないって書いておきながら(笑)
まだ読み足りない方は続きをどうぞ~。

お店に足しげく通っていただいているお客様、BLOGを見て、とても優しいとは言えない通信販売で購入して下さる
お客様がいたからこそ365日当たり前に過ぎゆく日々の中で、1月29日という日だけは僕にとっては毎年感慨深く
立ち止まり特別な日という事を実感しながら神社へお参りに行き、また気持ちも新たにスタートする、そんな1日です。
31歳だった好青年も41歳になり、顔のシワが目立ち小さな事で怒ったりしないようになりました(笑)
あとは何だろう。そんなに変わっていない気もしますが、幾らか余裕が出来て落ち着きが出てきたのかもしれません。
格好つけるのも辞めましたというと洋服屋なのにとも思われてしまいそうですが、あまり虚勢を張らずにありのままの
姿を見せる方が、僕らしい接客や表現が出来るのかなとある時からスタンスががらりと変わったように思います。
服装も一昔前まではジャケット颯爽と羽織ったり、きりっとした革靴履いてミミズを避けながら中津川沿いを
歩いたりもしていましたが、もうそういうアパレルの常識みたいなものに囚われるのは辞めようと。
こんなにもスウェットを着る人間になるなんて思ってもいませんでしたから(笑)
拠点を置く土地から受けるインスピレーション、人から受ける感覚的な部分での刺激、気候と気温、太陽の日照時間
自然がもたらしてくれるエネルギーに勝るものはないですね。それは間違いないです。


僕が岩手に来る前に札幌のお店を辞めて独立すると決めた時に、その時のオーナーに言われた言葉は
何となく今でも鮮明に忘れずに覚えています。
とにかく続ける事。それが大事だと。その時は正直あまりピンとこなかったのですが、今になってその言葉が
どういう意味で、僕に伝えたのかが少しだけ理解出来る気がします。
お店は案外簡単に出来るというと少し荒っぽい言い方になりますが、お店を作ることは意外とスムーズです。
理想があるし、開店の気持ちで盛り上がっていてきっと体力も気力も十分だから。
ただお店を続けるのは、そう簡単ではないなと10年やってみて身に染みて分かりました。
何となく訪れる3年・5年・7年の壁があって、それをクリアすると10年になる。うん。なるほどな。
これは本当だ。その為には決断の連続ですし、方向転換をしたり立ち止まる事も多々ある。
そうやってあがいているうちに、また別の道が開けてきたりして、身も心もボロボロにどん底に突き落とされた
経験があるからこそ、続けるという原動力になっているのも目を背けずに向けるべき視点かもしれません。
だんだん独り言のような、ボヤきみたいになってきました。
あともう少しです〜。

そうこうしていると、次の10年はどうしようかとまた考え始める訳です。
僕が販売している洋服やバッグ、靴や小物は、生きていく上で絶対に必要なモノではありません。
世の中で言う嗜好品に入るもの。
先ずは食べることが最も優先すべきで、次は住むところ。着るものは最後、後回しです。
優先順位で言えばそんなに高くはないはずですし、更に言えばrasikuで扱う洋服はとても高価。
それもきっぱり断言出来ます。
メーカーさんから洋服を仕入れて、毎月末に銀行へ支払いに行って帰ってくる姿はげっそりと痩せていて
それを10年間続けたので良く分かります(笑)
それでも欲しくなる、仕入れたくなるというのは、やっぱり商品や製品に魅力があるんですよ。
魅力が無ければきっと購入までには至らないですし、心を揺さぶられなければ高価な洋服を選ぶ必要はありません。
価格以上に自分にとって、その洋服が必要とか身に纏ってみたいと思って頂けるからこそ、実際に購入してみようと
思って頂けている訳です。
洋服を作る人・自分達の様なセレクトをして販売するお店、選んでくださるお客様の3つの異なる要素が重なり合って
商売が成立する訳で、もっと言えば作り手の先にいる工場や職人の方も入れれば4つの点が線にならなければ成立しません。
そう考えると、なかなか奇跡みたいなことにも感じますし、これが当たり前のようで当たり前ではないなという事が
ご理解頂けるのではないでしょうか。僕も文字起こししてみて、これはなかなかすごいことだと改めて思いました。

明日からは次の10年を考えてというような大それたことは言えませんし、そんなことは全く考えてもいません。
より自分たちにしか出来ないことを、という企てだけはありますがこの先どうなるかは分からないので。
ですが先ずは今日が幸せで楽しい1日を過ごせるように、自分たちに関わってくださる方が今日も幸せでありますように
そのために今やるべきことと、自分自身の気持ちや思いを表現出来る方法を考えてければ良いなと思っています。
という事で、また明日から?今日からも変わらずお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします。
rasikuに足を運び、お問い合わせを下さる方々にとって、このお店が大切な存在と思っていただけるように
これからも自分らしい洋服屋として、丁寧に尽くしていきたいと思います。
とても長い長いBLOGを書いてしまった。。。最後までお付き合い頂きありがとうございます。
2022・1・29

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